COPDの管理目標と管理指針
COPDは重症度に応じた治療方針を立て、長期的に疾病を管理していくことが重要です。
以下に日本呼吸器学会がガイドラインで示している管理目標とCOPDの管理方針を示します。
管理目標
COPD患者さんでは喘息患者さんと異なり常に気流閉塞があり、かつその病態は進行性です。このような病態の特徴から、COPDに対する管理目標は次のように定められています。
- 症状およびQOL(quality of life:生活の質)の改善
- 運動耐容能と身体活動性の向上および維持
- 増悪の予防
- 疾患の進行抑制
- 全身併存症および肺合併症の予防と治療
- 生命予後の改善
安定期COPDの管理
*増悪を繰り返す症例には、長時間作用性気管支拡張薬に加えて吸入用ステロイド薬や喀痰調整薬の追加を考慮する。
- 軽症のCOPDでは、症状の軽減を目的として、運動などの必要時に短時間作用性気管支拡張薬を使用します。
- 中等症のCOPDでは、症状の軽減に加え、QOLの改善や運動耐容能の改善が重要な治療目標となります。長時間作用性気管支拡張薬の定期的な使用や呼吸リハビリテーションの併用が推奨されます。
- 重症のCOPDでは、複数の長時間作用性気管支拡張薬の併用を行います。
増悪期の管理
COPDの患者さんはときに症状が短期間に悪化する「増悪」を起こすことが知られています。
- 増悪とは
- 息切れの増加、咳や喀痰の増加、胸部不快感・違和感の出現あるいは増強などを認め、安定期の治療の変更あるいは追加が必要となる状態を言います。ただし、他疾患(心不全、気胸、肺血栓塞栓症など)の先行の場合を除きます。
増悪は患者のQOLや呼吸機能を低下させ、生命予後を悪化させます。 - 息切れの増加、咳や喀痰の増加、胸部不快感・違和感の出現あるいは増強などを認め、安定期の治療の変更あるいは追加が必要となる状態を言います。ただし、他疾患(心不全、気胸、肺血栓塞栓症など)の先行の場合を除きます。
- 増悪時の重症度分類
- 増悪の重症度の評価は、症状、病歴(下表左)、徴候・身体所見(下表右)、パルスオキシメータ(動脈血ガス分析)などの臨床検査に基づいて総合的に評価します。必要な場合は直ちに病院を受診するよう患者さんに伝えておいてください。
増悪時には治療方針と入院適応の決定や他疾患の合併の鑑別のための臨床検査が必要です。
なお、呼吸不全を呈している患者さんや病期がⅢ期(高度の気流閉塞)以上の患者さんでは、入院加療が勧められます。COPD増悪時の重症度を示す病歴と徴候・身体所見 重症度を示す病歴 重症度を示す徴候・身体所見 - 安定期に比し悪化した症状の強さやその期間
- 安定期の気流閉塞の程度
- 年間の増悪回数の既往歴
- 肺合併症や全身併存症
- 現在の治療内容
- 人工呼吸器の使用歴
- チアノーゼ
- 呼吸補助筋の使用や奇異性呼吸
- 右心不全の徴候や血行動態の不安定などの心不全徴候
- 意識レベルの低下などの精神状態の徴候
- 増悪の重症度の評価は、症状、病歴(下表左)、徴候・身体所見(下表右)、パルスオキシメータ(動脈血ガス分析)などの臨床検査に基づいて総合的に評価します。必要な場合は直ちに病院を受診するよう患者さんに伝えておいてください。
- 増悪期の薬物療法
- COPDの増悪時の薬物療法の基本はABCアプローチです。すなわち抗菌薬(antibiotics)、気管支拡張薬(bronchodilators)、ステロイド薬(corticosteroids)です。
- 増悪の予防
- 安定期の患者さんには、COPDの増悪の予防と対処の方法について教育しておく必要があります。また、増悪の予防には、禁煙、ワクチン、吸入ステロイド薬や長時間作用性気管支拡張薬などが有効です。
参考: | COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第4版(日本呼吸器学会) |
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